京都大学COI-NEXT
食サイクルのイノベーション
(フード&アグリテック)未来共創拠点
京都大学COI-NEXT
食サイクルのイノベーション
(フード&アグリテック)未来共創拠点
世界人口が80億に近づきつつある中、食サイクル(食の生産・物流・消費・リサイクル)の安定的発展は人類にとって最も重要な課題のひとつです。一方、近年急速に進みつつある地球環境の悪化は、現在の食サイクルの持続可能性に大きな疑問を投げかけています。例えば、現代農業において必須のアンモニアの生産には莫大なエネルギーが必要とされ、環境を汚染しています。食サイクルのプロセスから生み出される有機木質・食品廃棄物・食品関連プラスチック廃棄物などが、陸から海まで多様な自然環境に放出・蓄積されています。
これらの課題を解決し、持続可能な革新的食サイクルを実現するために、2020年より京都大学COI-NEXT「食サイクルのイノベーション(フード&アグリテック)未来共創拠点」が設立されました。
当COI-NEXT拠点では、持続可能な食サイクルを目指して以下のビジョンの実現を目指します。
増大する地球人口を養う際、単位面積あたりの食の生産能力を向上させるために作物の根と根圏土壌に集束する微生物叢(マイクロバイオーム)の相互作用を高度バイオ解析機器で解析して、新規微生物叢肥料を完成し、「食の増産」体制を確立します。また、新興感染症・ウイルスなどの予防・未病社会の実現と健康寿命の改善に向けて、「食の免疫活性化と保存」のために発酵微生物の共生叢の組み合わせを明らかにし、日常の食生活を活性化します。さらに、持続可能な環境保全社会を実現するために、廃棄食品や難分解プラスチックを分解できる共生微生物叢を製剤化し、目標の「食サイクル」のフード&アグリテックを完成・充実させ、SDGsを実現します。
これらのビジョンを実現するために、当拠点は以下の強みを兼ね備えています。
研究
技術
体制
人材
植田 充美 特任教授
京都大学 産官学連携本部
本プロジェクトを率いますPLの植田充美(うえだみつよし)です。これまで、バイオテクノロジーの中でも、生命の分子情報に関心をもち、産学官連携を重視し、バイオテクノロジーの真の社会貢献を目指してまいりました。特に、地球を取り巻く環境の変動にバイオテクノロジーはどう対処していくかをいつも考えてきました。コロナ禍で、見えない脅威にロックダウンし、いろいろな価値観が急激に変化している今こそ、次世代へのジャンプアップのチャンスです。
私は、新しいバイオテクノロジー領域として、「細胞表層工学」を確立して、バイオインダストリー賞や日本農芸化学会賞(鈴木梅太郎賞)いただきました。本技術をもとに、JST・プラザ京都研究成果活用事業、文部科学省科研費特定領域研究:「ライフサーベイヤー」、JST戦略的創造研究推進(CREST)事業:「藻類完全利用のための生物工学技術の集約」、「細胞膜レセプタータンパクの1細胞統合解析技術の開発」や経済産業省・NEDO地域新生コンソーシアム研究開発事業に携わってきました。また、JST-研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) 産学共同 (育成型)の領域アドバイザーとして、JST共創領域の発展を支援しています。これまで、官民研究機関からなる研究チームを構成し、各研究機関との交渉や調整、進捗状況の把握と統括を行ってきました。さらにナノテクノロジーをバイオへの誘致するため大手の企業と共同研究も推進してきました。
ベンチャー企業バイオエナジー社への参画および、JST-CRESTの研究成果活用を基にして、大学内に自ら大学発ベンチャー「Barcodebody社」を立ち上げ、国プロジェクトもサポートし始めています。一方、JSTと京都市産業技術研究所の協力で、「京都バイオ計測センター」を立ち上げ、センター長として10年以上に渡り、社会実装や事業化までを視野に入れながらベンチャーや中小企業の橋渡しやマネジメントを進めています。
昨年度より、JST-COI-NEXT:「食サイクルのイノベーション(フード&アグリテック)未来共創拠点」(育成型)を運用してきています。このプロジェクトは、見えない生命体ですが、ヒトを含む地球上のすべての生き物と共存している「微生物叢(マイクロバイオーム)」に焦点を当てた壮大なプロジェクトです。歳時記などにみられますように、意外にも我々の生活と関連がある現象に、微生物叢がかかわっていることが生命科学の高度分析技術の進歩で見えてきました。まさに、微生物叢という地球上に残った一つのブラックボックスの扉が開こうとしています。ストレスの満ちた実験室での実験からフィールドへ飛び出してみると、この微生物叢は生き生きと地球の環境下で活躍しています。これは、未来の農業や我々の健康などとも密接に関係しています。また、地球温暖化への新しい対抗手段にも秘めた力を持っています。これらを感じたり知っていながら十分に解析されてこなかったため、その不思議の解き明かしに挑戦するワクワク感とそれを利活用するイノベーションに満ちた「微生物叢の能力」をDXで活用していきましょう。
これは、これまでの経験に満ちた人たちと、これからこの新分野に立ち向かっていく若い人たちのまさに「共創」を必要としています。さあ、ご一緒に!!
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研究成果
フードテックとアグリテックの微生物叢に関わる統合オミクスデータの一元管理集約とその一気通貫情報処理を世界で初めて実現する統合オミクスデータ解析センターを若手サブリーダーの下で新設する予定です。「食サイクル」に関わる新産業や商品を提唱・提供し、革新的な食の世界を現出させるための拠点となります。アカデミアや民間の多様な研究者、特に若手・女性研究者の育成拠点となり、地球規模での展開が可能です。
京都大学、早稲田大学、株式会社島津製作所、bitBiome株式会社を含めて8機関、14社が参画し、ビジョンの実現を目指します。
プロジェクトリーダー
植田 充美
京都大学 産官学連携本部 特任教授
副プロジェクトリーダー
堀江 真之介
株式会社島津製作所 分析計測事業部 グローバルアプリケーション開発センター
ライフサイエンスグループ 副グループ長(課長)
若手サブリーダー
青木 航
京都大学 農学研究科 助教
野村 剛
京都大学 産官学連携本部 フェロー COI拠点研究推進機構 機構長
冨田 直樹
京都大学 研究推進部 産官学連携課 共創プロジェクト推進掛 掛長
松田 修平
京都大学 農学研究科 研究推進員
室田 浩司
京都大学 産官学連携本部 本部長
奥澤 将行
京都大学 産官学連携本部 COI拠点研究推進機構 拠点運営統括部門長
南雲 誠心
株式会社島津製作所 分析計測事業部 営業統括部 産学官・プロジェクト推進室
連携推進グループ グループ長(課長)